男子ゴルフ、アメリカウィスコンシン州エリンヒルズで開催された全米オープンは、ブルックス・ケプカが16アンダーという全米オープンとは思えないようなハイスコアをマークし、見事初優勝を果たした。
日本期待の松山英樹は、最終日一時トップに2打差まで迫る猛チャージをかけたが、ケプカの勢いに一歩及ばず2位タイフィニッシュとなった。
松山自身メジャーで最も上位でのフィニッシュとなったが、日本のファンからするとあと少し、あとちょっと、何とかして勝たせて上げたかった。
松山英樹に足りないモノ
あと一つ足りないモノ?
現在来日中のゴルフ界のレジェンド、トム・ワトソンは松山英樹のプレイを見て「フルツールボックス」と賞賛した。
全米オープンのラウンド解説を務めたアメリカツアー3勝の実績を誇る丸山茂樹は、「ショット力だけならヒデキに叶う選手はいない」と賞賛した。
確かに全米オープンの最終日のプレイを見ていると、一人だけ異次元のショットを見せていた。
開催前、今回の会場となったエリンヒルズに関しては様々な意見が交錯していた。
全米オープンじゃなく全英オープンのようなリンクス的なゴルフ場。
フェアウェイは広いがフェスキューのラフは伸びたい放題に伸び、曲げたらペナルティとなる。
強風で荒れるため、ビッグスコアは出にくいだろう。
しかし、練習ラウンドを回った選手達の感想としては、フェスキューに入れなければさほど難しくはない。予選カットラインはイーブンくらいまで上がるのでは?
という予想通り初日からビッグスコアが乱立する全米オープンとなった。
だが最終日だけは様相が違っていた。戦前の予想通り朝から強風が吹き荒れ、好調だった上位陣はことごとく失速していく。
3日目63という驚異的なビッグスコアを叩き出したジャスティン・トーマスは最終日75を叩き優勝圏外に飛んでいった。
初日-7とスタートダッシュを切ったリッキー・ファウラーも最終日崩れ悲願のメジャー制覇はまたもおあずけになった。
そんな中、松山英樹だけは風が吹いても全く動じない、完璧なショットを撃ち続けた。
3日目右にフケガチだったドライバーはフェアウェイを捉え、ショートアイアンはことごとくピン筋に絡んでいく。そして不調だったパッティングもショットの復調と同時にドンドン入りだし、最終日のパット数は25とトップのケプカを上回るほどのタッチを見せつけた。
ドライバーは飛ぶし曲がらない。アイアンショットは最早世界一の正確性。パットも勢いに乗ればカップに吸い込まれるように入りまくる。メンタルも全く問題ない。
あと一つメジャーに勝つために何が足りないのだろうか?
これも丸山茂樹のコメントだが、あと一つ足りない物があるとするのなら「順番」だけだ。
今回の全米オープンを制したのはブルックス・ケプカだがもちろんメジャー初勝利。
これで男子のメジャートーナメントは7大会連続して初優勝組が勝利を上げている。もはや誰が勝ってもおかしくない戦国時代に入り込んでいるのだ。
なぜ戦国時代になった?
今年の全米オープンは、世界ランキング1位から3位のダスティン・ジョンソン、ローリー・マキロイ、ジェイソン・デイという3選手が全員予選で姿を消すという異常事態となった。
タイガー・ウッズの全盛期なら到底考えられない。タイガーが勝利できなくても予選落ちするなんてあり得ない出来ことだった。
だが今は最強と言われるダスティン・ジョンソンでも予選落ちするそんな時代。絶対的王者がいない時代に入り込んでいる。
理由はいろいろあるだろうが、恐らく最も大きな要素はギアの進化なのではないか?
松山英樹やジャスティン・トーマス、ジョーダン・スピースと言った若い世代は、当然のことながらパーシモンヘッドのドライバーなんて使ったこともないだろう。
各メーカーの技術革新は進み、ドライバーもアイアンも誰が使っても普通に飛ばせる時代になった。
そして近年はメジャーリーガーのダルビッシュが推奨するように、肉体改造による筋力増強も進み、体力差があってもトレーニングでカバーできる時代にもなっている。
こんな時代になると技術的な差がつきにくくなっているのではないだろうか?
とはいえ、世界ランキング100位辺りをうろついているような選手では、なかなかメジャーに勝つチャンスは少ない。
トップレベルに居続けられる技術さえあれば、あとは4日間のめぐり合わせが良かった選手が優勝する。もう松山英樹は、順番待ちの列に並んでいる状態だろう。しかもその順番は、限りなく前方まで進んでいるはずだ。
順番待ち、あとちょっと待てば日本人ゴルファーの悲願は達成されるはずなんだ。
だが、今年のマスターズを制したセルヒオ・ガルシアのように74回も順番待ちすることだけは極力避けて欲しい。。